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病院でのヒーリングタッチ

5月の末、ヒーリングタッチのワークショップでハワイに訪れた際、ホノルル市内から車で20分程のところにあるカイザー病院モアナルナで、ヒーリングタッチのボランティアを見学した。

ヒーリングタッチとは、アメリカの看護師、ジャネット・メンゲンが体系立てたエネルギーワーク。人体をとりまくエネルギー・フィールド(領域)に手で働きかけ、エネルギー・フィールドを整え、バランスを回復し、エネルギーを活性化するというもの。それにより、受け手の自己治癒力を促進することができる。副産物的な結果として、リラクゼーションや痛みの緩和、治癒促進、嘔吐や不安の軽減などが報告されている。

科学的にその存在が証明されつつある人体をとりまくエネルギー(私達日本人は、「気」と考えればよいでしょう。)。しかし、それらが人体にどのように影響を与えるのか、というところまでは解明されていない。いろいろな説があっても、まだ科学的定説には至っていない。

アメリカでは、しかし、ヒーリングタッチを含めたいくつかのエネルギー・ワークを取り入れ、実際に患者に対して施している病院が少なからずあるとのこと。

ヒーリングタッチは、それが作り上げられた1980年代当初から、アメリカン・ホリスティック・ナース協会が後ろだてとなって、看護師の継続教育のひとつとして、その正規カリキュラムが整えられてきた。ヒーリングタッチのカリキュラムを受講するとアメリカの看護師に必須の継続教育の単位となるのだ。そのためか、ヒーリングタッチは、看護師の間でも広まっている。

カイザー病院は、多くの分野にわたってボランティア・スタッフを受け入れているようだが、ヒーリングタッチ・ボランティアもそのひとつで、ボランティア・サービスという部門が管理している。現在、10数名のヒーリングタッチ・ボランティアが、週一回、2週間に一回など、シフトしながら行っているとのこと。

このカイザー病院にヒーリングタッチ・ボランディアが導入されたのは、約15年前のこと。私達のヒーリングタッチのインストラクターでもあるロリィや、ヒーリングタッチを学んだ看護師さん達が、地道な努力の上、病院での導入を実現させたと聞いている。最初は、まず、他の看護師や医師達にヒーリングタッチを経験してもらうところから始めたとのこと。そうして、徐々に理解を得ていったのだが、一度、その良さを理解されても、患者に施すための仕組みを作り上げるのは容易なことではなかったであろう、と、現場を見学して実感した。


朝、ボランティア・スタッフがオフィスにくると、決められたフォームに記載された、その日にヒーリングタッチをすべく患者さんの名前と情報が纏まっているファイルをチェックする。ヒーリングタッチは、患者さんからの希望のみならず、医師や看護師さんからのお勧めもあるとのことだ。

フォームには、患者さんの名前、病室、推薦者または本人希望か、病状、気をつけなくてはならないこと、その他注意点などを記載する箇所がある。その他注意点では、エネルギーワークへの理解度や、例えば最近親族を亡くした、とか、エネルギーワークにも係わってくる情報が記載されるとのこと。

この日は、たまたま在ハワイ日本人のボランティア二人が担当だった。ファイルにある患者さんの情報をチェックして、CDデッキを持っていよいよ病棟へ行く。

私達が向かったフロアは、がん、白血病などの病棟だった。
ボランティアは、病室に患者さんを訪ねる前に、必ずその日の担当看護師に会う。患者さんにヒーリングタッチを行うことを伝えるだけでなく、その日の患者さんの状態や注意すべき点などを聞く。また、マスクや手袋着用有無なども確認する。患者さんの状態は日々変化するためである。その日の気分というものもあるだろう。

看護師との確認を済ませるといよいよ病室を訪ねる。
ヒーリングタッチを以前やったことがある患者さんにも必ず、今やってもいいかと確認する。今回は、私達2名の見学者もいたので、ヒーリングタッチの許可を得たら、続けて、“日本からヒーリングタッチを勉強来ているのだが、ヒーリングタッチをあなたにやっているのを見学させていいですか?”とボランティアが確認してくれた。

この日4名の患者さんを訪ねたが、2名がヒーリングタッチのリピーター、2名が始めてヒーリングタッチを聞いた、という患者さんだった。驚いたことに4名とも見学を許してくれた。4名のうち3名は、元気が見られない、見ていて痛々しい感じの患者さんだったが。

私達がマスクと手袋を着用して訪れた最初の患者さんは、リピーター。自らベッドにまず仰向けに横たわり、静かに目を閉じてヒーリングタッチを受けていた。ヒーリングタッチを施す時は、病室のドアの外側に“Healing Touch in Process(ヒーリングタッチをやっています)”と書いたサインを貼る。できれば、邪魔が入らないように、とのことであろう。

CDをかけ、ボランティア2人によるヒーリングタッチが始まった。やせ細り、見るかに痛々しいその男性は、その日背中に痛みを覚えていたようで、横向きに向きを変え、1人のボランティアに背中を向けて、多少うずくまるような姿勢になった。ヒーリングタッチは、様々なテクニックがあり、それぞれ手順があるのだが、病院などの臨床現場では、ベッドの位置や患者さんの状態、姿勢で、臨機応変に対応しなければならない。ボランティアの2人は、示し合わせたかのように、本来ならやり難いだろうその状況をものともせずに流れるように息のあったヒーリングタッチを施していた。患者さんは、目を軽く閉じ、感じ入っているようだった。

ボランティアは、その患者さんに付き添って寝泊りしているパートナーにもヒーリングタッチを行った。椅子に座ったパートナーは、初めてヒーリングタッチを受けたのだが、目を閉じ、気持ちよさそうに、とても幸せそうな顔をしていたのが印象的ではあったが、また、その奥に深い痛みを感じたのは私だけだっただろうか。

次の患者さんもリピーター。マスクと手袋着用。あまり力の感じられない細い小さなその女性は、ヒーリングタッチを心待ちにしていたのか自らベッドに横たわった。仰向けで、目を閉じ、黙ってヒーリングタッチを受けている患者さん、そして、流れるようにヒーリングタッチを施すボランティアを見ながら、ただただ涙が出てきた。その姿があまりにも優しくて、穏やかで、愛に満ちていたから。ヒーリングタッチが終わり、その患者さんは、ボランティアにとても感謝していた。後から聞いたのだが、この患者さんはその後ひと月もしない内に亡くなられたとのこと。

3番目の患者さんは、入院して間もない重病の男性だった。マスク着用。ほとんど表情が無く、力も全く感じられず、細めに開けた目はボーっと宙に浮いており、ただ横たわっている状態だった。初めて受けるヒーリングタッチをまず、患者さんに付き添っている奥さんに伝えなければならなかった。許可を得て、ボランティア二人は、ヒーリングタッチを始めた。それを見ていた奥さんは、数分もしない内に口を押さえて病室から出て行ってしまった。その理由は計り知れないが。
無表情の患者さんは、ヒーリングが進むにつれ、静かに目を閉じていた。寝ているわけでもないようだった。静かな時が流れていった。ヒーリングタッチが終わると患者さんは目を開け、無表情のまま感謝をしていた。

4番目の患者さんもヒーリングタッチは初めて。化学療法を受ける時だけ入院をする方だった。テーブルには、その女性のお姉さんなる方が持ってきた大きなシェイクが2本置いてあり、他の3名と比べるとお元気そうな患者さんに見えた。点滴を打っていたので椅子に座った状態でヒーリングタッチを行った。患者さんは、少々顔をこわばらせ、終始目をあけていた。ヒーリングタッチが終わると、その患者さんは、「これまでに無い、違った感覚だ!」と感想を述べ、「何故もっと早く来てくれなかったの?」と言った。気持ちがよかったことは明らかだ。

病棟ですら馴染みの薄い私は、ましてやがんや白血病の末期の患者さんと接する機会は普段ほとんどない。病室に入るのも怖いような、また遠慮がちになってしまう。そして、そのような患者さんへのヒーリングタッチを、涙無しに見ていることはできない。(マスク着用のお陰で、患者さんに涙を見せなくてもすんだが・・・)しかし、そんな中で、痛々しい患者さんと優しいヒーリングタッチを見ているうちに、不思議な感覚を覚えた。

“(怖いとか、重病で可哀想とか、)そういうものが(全て)取(り去ら)れて、一つになる感覚があった。人は何故病になるのか。そういうこと(疑問)もあるのだけど、それすら一つというか・・(皆、)同じだからヒーリングをする・・・というか。”
(2009年6月1日パーソナル・ジャーナルより抜粋)

病気の人も元気な人も、皆同じで、ただそこにいて、ただヒーリングが行われている。私は元気かもしれないけど、病気の人は、私のために病気になっているのだ、、とすら感じた。だからヒーリングをするのだと。

そして、漠然と、
“自分は・・・自分もこういうことをやるのだと思った。”
(2009年6月1日パーソナル・ジャーナルより抜粋)


初めて見学した病院でのヒーリングタッチ。病室の患者さんに対して、ヒーリングタッチのようなエネルギーワークが行われている意味の深さを感じた。末期の患者さんのように弱々しい、痛々しい体に触れることはままならない。触れずに行うことができるエネルギーワークのメリットをあらためて感じた。それだけでなく、恐れや不安、痛みで憔悴しきった患者さんに、エネルギーワークを通じて、心を通わすことができる。心地よさや触れ合いを感じてもらうことができるのだ。ヒーリングタッチには、これまで自分が考えていた以上の役割、可能性があることを実感した。

ハワイで受けたヒーリングタッチ・ワークショップの参加者20名近くは、病院を中心に数年以上ヒーリングタッチ・ボランティアをしている人達ばかりだった。カイザー病院のみならず、他の病院もヒーリングタッチ・ボランティアを受け入れており、その現場があるから、ということもあるだろうが、こんなにも大勢の人たちが何年もボランティアを行っていることに感動せざるを得ない。

“ボランティアの二人、そして、ヒーリングタッチのクラスにいた多くの人たち、そのボランティアとしての優しい気持ちがプレシャス(貴重)だった。普通のようにあることが、プレシャスだった。”
(2009年6月1日パーソナル・ジャーナルより抜粋)

その貴重な優しいハートを、私もヒーリングタッチとともに育みたいと、心から願った。
by phytobalance | 2009-08-21 23:43 | ヒーリングタッチ・HT