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越前峠を越えて

大雲取越えのちょうど中間地点にある地蔵茶屋でお弁当。
整備された休憩所はほどよい規模のせせらぎの横に設置されていた。
世界遺産だけあって、設備は行き届いている。

山の中の日差しはやわらかい。
せせらぎをBGMに、昼寝したい気分。


地蔵茶屋を後にし、最後のピーク越前峠へ向かったのだが、その道のりは、不思議な世界が繰り広げられていた。

まずは、せせらぎに沿ったなだらかな上り坂。
古道とか、大雲取越えという印象とは対照的に、まぶしい緑のトンネルの中、せせらぎと歩む癒しの小道である。水より命をいっぱいいただき、あたりの植物は、やわらかに生き生きとしていた。
みずみずしいこの空間は、美しく輝く苔に覆われていた。

それに続くは、さらに深く苔むした長い長い急な石段の道。
その緑の絨毯は、屋久島のもものけの道を彷彿させる。
癒しの道とは違って、乾燥しているように見える深い苔は、歴史の深さを印象付ける。

古道らしい。

ここを彼らも歩いたのだ・・・
越前峠を目前にし、余裕が出たのか、やっと悠久の時を感じる。


越前峠は、予想に反して、穏やかな平地であった。
森の中の峠は、ピークと言っても、遠く景色が見えるわけでもなかった。
梢の隙間の木漏れ日が、あたりを一層長閑にしていた。



さぁてと。ここから。
登りは思いのほか、きつくなかったので、やはり、難所は、ここからの下りなのだ。
たった2.4Kmで、一気に標高差約600mを下る。
その傾斜は、胴切り坂とも呼ばれる。
長くて急なその坂は、ほとんど全て石段である。
登るはおろか、下りすら恐ろしいのに、間違えなくきちんと石が積まれている。
さすが、古道である。


恐れていた下り坂。
でも、ここを下りたかったのだ。

昨年、大雲取越えの次の山越えルート、小雲取越えをした前日、足ならしに大雲取越えの出口から逆行して、30分ほどにある円座石(わろうだいし)まで歩いた。
その時、70名ほどいただろうか、ご年配のハイカー達が続々と越前峠から下ってきたのだった。少なくても6時間は歩いているだろうに、自分より20も30も上の大先輩達は、元気にぴょこぴょこ現れたのだった。
小雲取越えを翌日に控え、その時実は多少の不安を抱いていたのだった。
(翌日、小雲取越えの途中で、彼らにものすごい勢いで追い越された・・・)


そう。その念願の越前峠越えなのだ。
さぁ、いかに?

不思議と膝へのダメージはなかった。
日頃の筋トレの成果か。
実は、ここ10年くらいのうちで、私の身体は今最も鍛えられているのだ。
体重はちっとも減らないが、さすがに、筋肉は強くなってくれたらしい。
膝が笑うことなく、難なく難所を下り切った。

ここまでくれば、終わりも近い!
ゆるくなった傾斜を足を投げ出し歩きながら、心が軽くなった。


しかし、それでも大雲取越えは終わらない。
気があせる分か、なかなか道が進まない。
少々惰性の歩みのうちに、やっと、最後の休憩所に着いた。
座りながらの足、腰のストレッチが、この上ない痛気持ちよさを与えた。

皆は多くを語らない。疲れているのか、満足感にひたっているのか。

再び、甘夏が、最後を歩く元気をくれた。


そしてほどなく、円座石(わろうだいし)に到着した。
熊野三山の神々が座って語らったといわれるこんもりとしたこの塚は、いつもと変わらず、黙ってそこにいた。木漏れ日がスポットライトのように、神を表わす梵字の一つを照らしていた。


3たび立つ、神々の領域。


二つの山越えルートの間の長閑な村落、小口は、もうすぐそこだ。
by phytobalance | 2008-05-04 09:33 | 森・Forest